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技術の転換点に反対するのは、自分の技術が陳腐化するのが怖いから。反対しそうな人から、新しい世界に連れて行ってあげればいいんです(笑)。

サントリー株式会社
情報システム事業部システム開発部 課長
片山 隆 氏
Profile
Takashi Katayama
東京のソフトウエア会社を経て、90年サントリー(株)に入社。00年からは標準化チームとして“変化に強いシステム”を志向し、他社に先駆けるかたちでJ2EEを基盤とした、オブジェクト指向・コンポーネントベース開発導入の先頭に立つ。いっぽう、社員へのIT技術研修を担当するなど、長年人材教育にも携わる。

エッジな技術を取り入れ時代を先取りする企業へ

―サントリーは、97年に社内システムをWebベースに移行させ、02年には全ての新規システム開発をJ2EEでおこなうなど、時代を先取りする企業として定評がありますが。
ITの分野ではとくにそうですね。J2EEを採用したのも、IT部門のトップがエッジな分野に関心があり、新しい技術を進んで取り入れる社風があったからです。わが社の年間の売り上げは1兆3000億円に上りますが、情報システム事業部は80名という少数のエンジニアで担っている状態ですので、なにかしらの技術に特化しないと厳しいという一面もありました。

―改革の旗振り役として活躍されていますが、ご自身の取り組みについて教えてください。
私はもともと現場志向で、業務システムについてはつねづね“改善”という視点で考えてきました。仕事がおもしろくなったのは、入社2年目にセンターオペレーターの部署を任されてからですね。それまで放置されていた部署でしたので、「もしやこれは宝の山では」と思い、改革に乗り出しました。この春からはサントリーの研究開発・生産アプリケーションを任されたので“より現場をつかめる”面白さを感じています(笑)。

―つぎつぎと新しい取り組みに成功する秘訣はなんでしょうか。
どのように持っていくのがベストなのか、作戦を組み立ててみるといいと思います。技術の転換点で反対勢力が登場するのは、自分の持っている既存技術が陳腐化するのが怖いから。だから、反対する人から新しい世界に連れて行ってあげればいいんです(笑)。ポイントは、現場の中堅層や上位置から連れて行くことですね。

思考のフレームワークとしてのUML

―UMLは、IT業界の技術として認可されていますが、それ以外にはどのような応用が期待できるでしょうか。
UMLは、物事を取りまとめる際に大いに役立つ技術だと思います。物事を整理して人に伝える思考方法としてはもちろん、問題解決のために応用していくことも可能だと思います。
文章は読むのに時間が必要ですが、図を用いると全体が一目で把握できるし、時間もかかりません。詳細に書くのか、ざっくり書くのか、粒度も選択できますしね。

―具体的には、どのような人に役立つと思いますか
科学的に物事を解決していく業界では、かなり役に立つ技術だと思っています。上層にいる人たちにもっと目を向けてもらえたら面白いでしょうね。ある建設会社の知人からIS09000を取得するために、何十種類もの文章をクラス図で整理したというケースを聞き、その応用の可能性に興味を持っています。
また、高校などの教育現場でも思考のフレームワークとしてUMLを取り入れてみてもいいですね。問題を整理する思考法は、社会でもビジネスツールとして役立つので、これからの若い世代にはぜひ身に付けてもらいたいですね。

3Kが浸透するIT業界優秀な若手SEの確保が急務

―中国やインドをはじめとするオフショア開発が盛んになってきていますが、将来的に日本にはどのような影響があるのでしょうか。
先日も上海で現場のSEらと意見交換をしてきたのですが、彼らには20年前の日本の学生が抱いていたSEの憧れ以上のパワーを感じています。実直かつ貪欲だし、成功してやろうと夢を持っています。日本でも、こういう優秀な学生がIT業界に入ってこないとヤバイですね。現在の日本では、“IT業界=3K”のイメージが定着しつつあって、優秀な人材が他の業界にどんどん流出しています。このままでは日本は人材面からソフトウエア後進国に成りかねませんね。幸い、現段階では日本が空洞化しているとういよりも、中国と役割分担をしている段階ですから、手を打つなら今です。今後、コストダウンや品質改善などの技術革新は日本が受け持ちつつ、安く大量に作るところは中国などの海外に担ってもらわないと、人材は圧倒的に不足します。中国との関係が改善されれば、こういう役割分担はますます加速してくはずです。

―実際には、IT業界のどの分野で人材不足が深刻化しているのでしょうか。
じつは、昨年新車を買ったときに技術者不足の深刻化を実感したんです。組み込み系エンジニアは、かなり大変な状況にあるのではないかと。最新のクルマはミリ波レーダーで前車との車間を調整したり、センターラインをはみ出さないように睨んでいるカメラも付いていたりして、想像以上にコンピューターに制御されています。まさにロボットなんですね。先日クルマの調子が悪いとディーラーに持っていったら、車体にPCをつないでログから原因を調べてるんです。3年後には、電子制御装置では倍に増えているはずですから、これではもう技術者が足りなくなるわけです(笑)。

―IT業界の空洞化を回避し、日本の競争力を維持するために必要なことはなんですか。
人材の不足を業界全体の問題として考えていかないと、開発の拠点は全て中国になってしまいます。量でカバーされるのはいいけど、質でカバーされるのはマズイ。新しい発明は日本からという環境をつくっておかないと、これからの日本は競争力を失ってしまいます
優秀な人材を確保するためには、IT業界は技術者の処遇を見直してあげる時期に来ているのかもしれない、と感じていますね。